2015/10/31

スピリチュアル・カルテNo,10「あにいもうと」

ケースファイルNo.10「Kさんの場合」


占い師をしていたときも、ヒーラーになってからも・・・
口が重くて、暖簾に腕押し、みたいな
自分から何もしゃべらない人は、やりにくいの一言。

自分が何を知りたいのか、何が問題で、何について悩んでいるのか、
自分はどうしたいと思っているの、何を解決したいと思っているのか、
今がどういう状況で、どのようないきさつで今に至っているのか、
そうした情報をまったく提示してくれないことには、いろいろ難しい。
(逆に自分に都合がよい情報だけを知りたがる人、
こちらからの言葉を期待するばかりの人とか、
自分勝手に解釈してしまう人も困りものなのですけどね。)

何故って、
「だまって座れば」の水野南北(江戸時代の辻占の大家)じゃあるまいし、
読心術師とかサイコメトラーとか、
何でも見通せる霊能者じゃああるまいし・・・

ヒーラーも占い師も、相談者が解決したいと思ってるこそあっての
アドバイザーで施療家なんで。

自分から口をなかなか開かない人は、
こちらの度量を測ろうと「あてもの」を期待している人か、
あるいは知られたくないことを抱えているか、
言っても解ってもらえないという人とか・・・
あとはこういうところに相談なれしていないとか、
何をどう説明していいのか、
本人が一番よく分かってないケースとかもあるけれど。

それでも、訪れたり、アポインメントを取ってくれたということは、
そこにいたるまでの決心というか、迷いに迷った日々だったり、
ふとした思い付きにしても、
何かしらの「動機」が隠されているものなのだが。
時に、ガイドと呼ばれる人たちが、背中を押すようにして、
行かせるというか、訪れるように仕向けていたり、など・・・


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親子関係は、時に過去生での縁によることがあったりする。

さて、紹介でいらしたKさんは、
もともとペットの問題で当方にいらした人だった。
その時は電話とメールだけのやり取りだけ。

元駐車場だった土地をつぶして新築した家に引越ししたばかりで、
金縛りにあったり、
自閉症で引き篭もりがちの娘さんが奇妙な夢を見たりするという。
従って、そのことを気にして、はじめて当方に来訪されたのだ。

私は霊能者ではない。
だから、相談が畑違いというか、ちょっと違うのだが・・・と思いつつも、
とりあえず、話を聞くだけ聞いて、
できる範囲のことをサポートしようと思った。
ヒーリングでは霊を引き寄せやすい状態にある人を、
波長を整えることで改善させることもできなくはないから。


Kさんはあまり自分のことを語らない人だった。
必要以上のこと、いやさ、必要なことさえも・・・。

私は「あてもの」をする霊能者でも占い師でもないし、
心理セラピーやカウンセリングをする学者でもないので、
とりあえず、こういう場合はちゃっちゃか最初の説明をして、
施療に入っちゃうしかないのです。

オーラをチェックすると、破裂寸前の風船みたいに膨れている。
いろんなもの・・・
抑圧した感情や想いが溜まりすぎて、
ぎゅうぎゅうにつまっている感じだ。

※この場合の表現、私が感じたことは事実というより、
私がそのような印象を持ったということ、私にはそう見えるというだけで
別の人は異なる印象を抱くだろうし、十人十色の表現で皆違うはず。

お子さんのことで悩んでいるということだけれども、
オーラの中にはKさん自身の母親との関係性の問題が大半を占めていた。
母親に対して甘えられなかった子ども時代、それは昔も今も代わらぬよう。
わかって欲しいと想い、けれど解ってもらえないと想い、
見捨てられたように想いつつも自分から距離を持っている。
母親に対しても自分の父親に対しても、大きな心の溝を抱えたままだ。

つまりは彼女自身、インナーチャイルドの問題を抱えている。
癒されていない子ども、を自分の中に存在させたまま大きくなった
アダルトチルドレンともいうべきか。

さて、彼女の娘さんは学校を休みがちでとても甘えん坊。
彼女がいなくなると大騒ぎをするので、
土日はまず出かけられないという。

オーラをチェックするも、
彼女の中に他人にいろいろと知られたくないという気持ちがあるので、
あまり覗くことは出来ないし、
情報もそれ以上読み取ることはできなかった。
ただ、解ったのは、憑依されてはいないということ。
オーラに霊はくっついていないし、
チャクラにも霊が入り込んでいる気配はない。

彼女を通して、住んでいる今の家を探ってみるが、
そこも別段問題はないように思えた。
地魂祭もちゃんとやったようだし、地霊が騒いでいる様子もない。
ただ、駐車場だったということなので、人の出入りが多かった場所。
残像という形でのエレメンタルもあったろう。
「道」ができていた可能性もある。
憑依されている「あたり」もないし、
金縛りは一時的なもののように思われた。

とはいうものの、
その道の専門家でない私がそんなことをいうのはいささか無責任な気も。

ベッドに横になってもらって施術を開始してみたが、情報は降りてこず、
とくにこれといっての映像も見えてこない。
そういう時は、ただ黙々とエネルギーのパイプ役に徹して、
ハンドヒーリングをするのみ。
頭の中で別のことを考えながら。
そういうときは、「お飯なに食べようかなあ」とか・・・
何しろクライアントさんのオーラに踏み込んでいる状態なので、
余計なことは・・・相手に影響を与えない程度のことを考えるのがお約束。

仰向けになってもらい、腹部のチャクラに手をかざしていると、
子宮に「母としての哀しみ」が目いっぱい詰まっているのを感じた程度で、
あとはただ、乾いた喉を潤すように、足りない気を補うのみ。

そろそろ終わりーという頃、やっと情報がやってきた。

ただ、いつもと違って、ものすごくおぼろげ。
映像が曖昧。薄いというのか? 映りが悪いテレビみたいに。
ラジオみたいな感じなので、時代とか国とかを推察する手がかりなし。

彼女・・・Kさんはその人生で男性で、まだ年若い少年だった。
少しばかり年の離れた妹がいて、
その妹のことをすごく可愛がっていた様子。
お父さんはとっくに亡くなって、母親は生活のためもあって再婚をした。
その義理の父親が問題のある人だった。
大酒飲みで暴力を振るう人で、
母親もそうだし、連れ子である少年をよく殴ったりしていた。
少年は妹をかばい、自分たちをかばうことをしない母親に絶望し、
いつかこの家を出てやる、と誓った。
妹に、
「早くおっきくなって、お金をためて、
この家を出て、一緒に暮らそうな。それまで我慢しよう」
と言いきかせながら。

それから数年たち、少年は報奨金目当てに兵役へと参加した。
たくさんのお金をもらって、妹を連れて、新しい生活を始めるために。
妹は「お兄ちゃん、私をおいていかないで、
私も連れて行って」と懇願したけど、
戦場に連れていくことなんてできない。

自分がいない家に残していくのは不安だけれども、
手っ取り早くお金を稼ぐには一番いい方法だと彼は思った。
それよりも、その先に待っている、
ちょっと良い暮らしのほうが、妹のためには良いように思えた。

戦争を生き延び、彼は報酬を手にして家に戻った。

しかし、その時、知ったのは妹が死んだという事実だった。
義父も死んでいた。

彼が家を出た後、妹は義父の暴力を受けた。
それは性的暴行を含むものだった。
彼女は自殺したのだ。

彼はショックで、家を飛び出し、
せっかく稼いだお金をいたずらに散在し、あちこち放浪して過ごした。

私が知ったのはここまで。

そして、彼女に話したのはここまで。

その彼だったときのその妹さんは、今の彼女の娘さんだった。


妹さんは、性的暴行を受け続けた屈辱にいたたまれず、
ある日、義父を刺した。
自分の手が真っ赤に染まっているのを見て、正気にかえり、自殺をした。

娘さんはいつも自分の両手が真っ黒になる夢でうなされているという。

それは、真夜中の寝室で相手を刺した時の血の色・・・
月の光だけで真っ暗だから、手が黒く染まったように見えたのだ。


さて、
この人生が見えた後、左目の端に、大五郎みたいな頭をした、
金太郎みたいな布着れをした男の子が見えた。
にこにこしていて、屈託が無い笑顔で。
そして、別の人生がちらりと見えた。

日本の農村。綿花の畑が見えた。
ほっかむりをしている女性。Kさんだ。
その農家の嫁らしい。
しかし、当時のお嫁さんは大変だ。
主婦としての家事、家業のこと、そして子育て。
朝から晩まで働きづくし。

そんな彼女に不幸が襲った。
可愛い我が子が池に落ちて死んでしまったのだ。
そんな忙しい中、
子どもをしっかり見てろ、目を離すなって言われても無理だと思うが。


ああ、さっき 目の端に見えた子どもだ。

彼女の母としての哀しみ、過去生で子どもを亡くしたこともある。
しかし、それだけではないだろう。

このことを話すと、堰を切ったように彼女の目から涙があふれた。

「実は離婚して、前の主人との間に子どもが2人いたんですが、
上の男の子を連れてはこれなかったんです。」

奇しくも彼女は、

今の娘さんと兄妹だったときの人生での、
母親と似たような立場にいた。
そして、皮肉なことにかつての自分たちと同じように、
兄と妹を持つことになったのだ。
妹さんだった娘さんは同じポジションにいるわけで。

彼女が彼であったとき、妹さんの死を自分のせいだと、
自分が家にいて守ってやれなかったから、
もっと早くに家を連れ出してやれなかったせいだと、
ずっと自分を責め続けていた。

そういう想いが、彼女の中に存在していて、
今の母親としての気持ちの上に重なり、
何重もの重圧になっていたんだ。

私は残してきた息子さんはとてもちゃっかりした性格で、
お父さんのところに残るほうが自分の将来的にも有利であること、
そういうのを計算してのことだから、
「見捨てられた」などとは思っていないこと、
そして、
かつて過去では息子さんを不幸な事故でなくしてしまったが
今の息子さんはちゃんと生きていること、などを説明した。

なぜって、
彼女はかつての自分ができなかったことを
できるようになるために生まれてきていたから。


・息子の命を亡くさない
・妹(娘)さんを今度は連れて出る
・自分の居場所である家を持つ

ほら、全部ちゃんとできている。

だから、それでいいのだ。


彼女は、再婚した旦那さんが、
もし娘が年頃になった時に性的なことをされたらどうしよう・・・
という不安をずっと抱えていたと、そう打ち明けてくれた。
だから、自分がいないときに2人きりにさせるのを怖がっていた。

娘さんが甘えん坊だから、
自分が家を離れることができないんじゃんない。
誰でもない彼女自身が不安だったんだ。

かつて、自分が家を不在にしたことによって、
妹さんであった娘さんがそんな目にあってしまったから。
その経験からくる、危惧なんだよね。

そんなことが過去にあったのなら、それは仕方ない。
過剰に心配したとしても。

でも、今の旦那さんはかつての義父じゃない。

昔の母親は男選びを失敗したし、母親としても子供を守れなかった人。
けど、彼女は違う。同じ失敗を選ばなければいいだけのこと。
それよりも今の旦那さんとの関係を築くほうが大切。
でないと、
そのいらぬ心配と疑いの気持ちから、
このままでは夫婦関係もダメになってしまうから。

「私をおいていかないで」
とは今の娘さんの口癖だという。

かつて大好きだったお兄ちゃんの娘に生まれてきたのだもの。
彼女が兄を恨んでいるはずはない。

実体としての魂はたぶん、
転生しているであろう、かつての彼女の息子さん・・
金太郎ファッションの童子はとてもにこにこしてこちらを見ている。

そんな安らかな顔をした子がどうして母を恨んでいるであろうか?

大丈夫、きっと今のままでも良いお母さんだから。

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このケースでは、
母であるKさんも癒えない過去生からのトラウマを抱えていて、
その人生で妹だった、今生の娘さんもまた、傷を抱えていたりする。

再会できて、
大好きなお兄さんの娘に生まれてきてよかったね・・・
めでたし、めでたし、チャンチャン♪

というわけにはいかない。

Kさんの場合、本人だけでなく、娘さんも問題を抱えているし、
現在の人生での両親への想いとか、再婚した相手との間の問題とか、
いろんな問題が複雑に絡みあっていたので、
継続的に通っていただいて、ひとつひとつもつれた糸をほどくように
段階的にヒーリングやセラピーを受けてほしい人の一人だった。

結果的には、娘さんを一人で家に置いて外出することはできない・・・
という事情もあって、この後の来訪は望めなかった。

(いや、それは方便で、コノヒトアテニナラナイシ、タヨリナイワ~
だったのかも知れないがっっっ)


何世代もの人生で積み重ねてきた「想い」だから、
癒されるには時間(年月)が掛かる。
今の人生の問題も、山積みといえばそうなので。
心療内科や精神医学のセラピーの現場においても、
PTSDなどフラッシュバッグの傷の治療は根が深いから、
時間を有するもの。
それと同じで、いくら覚えていない過去生の問題といえど、
一度のセッションで
「原因はこれですよ」と伝えたところで、
「ああ、そうだったんですね」なんて
簡単には終わらない。

その人の心の重荷からの解放・・・癒しの道程は、
ヒーリングセッションの時間のみ、というわけではなく、
ある意味で人生そのもの、毎日の日常が「癒し」の日々だといえる。
確かに、セッションで与える情報はひとつのきっかけであり、
自分の問題と対峙する時間と空間を提供しているだけといえばそうで、

自分を苦しめるこの問題から解放されたい・・・
と思ったときがスタート地点で、
セッションをも含む時間すべてが、癒しと気づきの道のりだ。
その間に出会う人や考えること、
見つけたもの、耳にした言葉、感じたこと、
見えるようになっていく様々なことすべて・・・癒しの小道具だ。

だから、このようなセッションを継続的に受けなければ癒されない、
問題が解決しない、ということもない。


だけど、Kさんの場合、
もうちょっと・・・せめてあと少し、
彼女の抱えている荷物を軽くする手伝いをしたかったなあ・・・と
そう思うケースのひとつでありました。

私としては中途半端になってしまったのが、ちょっと残念で
悔いの残ったケースでした。



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