2020/05/18

愛の骸 夢の残り香 ①

人は人生を生きる上で
記憶でありデータでもあるエレメンタルを創造する
それらは肉体と心と思考が反応して生産されるもの

人それぞれに創造するエレメンタルは
量も質も多種多様に異なるのでそれが故に私たちには
オリジナリティに満ちた個別のパーソナリティを創り
その人独自の人生を生きることになる

言い換えていうなれば
人格(パーソナリティ)というのは
その人が創ってきたエレメンタルの集合体であり
その人生を生きる上でペルソナとして創られてきた
パーソナリティもまた
キャラクターとしてのエレメンタルである

このストックされているエレメンタルの集合体こそが
その人そのものと言っていいものであるが
今の人生で使用している部分(今生で生産したもの)が
表層意識とも言える部分で顕在意識とも言える
そして無意識下に眠らせているアーカイブの奥底に
未整理整頓なままストックされて放置されているのが
潜在意識と言われている部分
過去生の記憶というのはここに埋もれているもので
もちろん今生の記憶でも不要と切り捨てられたものは
ここに乱雑に放り込まれていたりする

このデータ 記憶たるエレメンタルがなければ
私たちはただの土くれ 肉の塊にしか過ぎない
故にエレメンタルは私たちが人である証
神とも天使とも違う 別の生き物である証

神も天使もエレメンタルを完璧に創造することが出来るが
私たち人間だけがエレメンタルを不完全に創造する
それは無意識にエレメンタルを創造しているという意味で

しかし神も天使も人の人生を創ることは出来ない
自らの人生を自らの身体を通して創る
エレメンタルを創造することによって
紡いでいくことが出来るのは人間だけに与えられた特権

人間にしか創ることが出来ない
完璧ではない不完全なエレメンタルは
予定調和を外れたところでの運命を紡いでいく
創造者である当人を翻弄し想定外な人生をギフトし
完璧であるはずの世界にありえない不調和を創る
そして本来ならば主であるはずの創造者たる人を
操り支配する力を持って君臨し自らを養うために
自我を肥大させて生みの親たる人を奴隷化する


さてエレメンタルは
集合体としても個別の物体としてみたときにも
各々が生まれながらの振動数を持ち波動を放つ
結果その波動が同種のものを引き寄せる
これこそが引き寄せの法則の原理であり
人生すなわち思考や感情の現実化は
この法則によって成り立っているといっても
まったくもって過言ではない 
細かくというとそれだけではないのだが
単純に言ってしまうとそのようになる

かといってその人自身を表す
すべてのエレメンタルの集合体
(過去に生きた人物としての全てのパーソナリティ
とその人生の記録/記憶 カルマのレッスン
他人に埋め込まれたもの 吸収してしまったもの等)
のすべてが常に稼働して
何かを引き寄せているというわけではない

活性化すなわち電源が入っているもの
手元において毎日使用しているようなもの
そうした顕在意識とも言えるエレメンタルと
いかようにしても電源をoffにできず
亡霊のように"半分死にながら"稼働している
忘却の彼方から当人を操っている
無意識下で蠢くネガティブで
それでいてとてもパワフルなエレメンタル

これらが大体においてリアルな今を創っている

エレメンタルは実に多種多様な形骸を持つが
中でも厄介なのが"人"の形をしたエレメンタルで
自らの過去生のパーソナリティ以外の他者の形骸

そうした木偶人形のようなエレメンタルほど
厄介で手強いものはない

何故なら当人がそれを手放したがらないからだ

まるで愛着のある
子供の頃に親や他者からの愛情の証として与えられた
人形やぬいぐるみを大切にするように
想い出の一部として自らの分身のごとく
心のパーツに取り込んでいるものだから

それがどんなに汚く惨めに
ボロ屑かボロ雑巾のように
形骸すら留めぬものとなっていても
簡単に捨てることが出来ぬのが
人の想いというもの



"夕闇の中でささやく木々は
 月影にさらわれて
 切ない悲しみの歌を奏でる

 月影にさらわれながら
 彼女に見えたものは拳銃の影だけだった"

by マイク・オールドフィールド「ムーンライトシャドウ」


フランス革命の末期 その混乱の中
親や仲間とはぐれてしまったロマの女の子は
その日に食べ 生きていくために身を売ることを覚えた
みなしごの浮浪児は確実な保障を求めて
一介の街娼から娼館に帰属するようになり
すっかりその世界に馴染んだ頃
かつて自然のままに暮らした純朴さは
あとかたもなく消え失せていた

気が付けば王党派も再び息を吹き返していて
革命時の反逆精神と熱気はどこへやら
街は退廃的で貴族たちが大手を振り始める
ときどき高級娼婦たちとの駆け引きや
昔ながらの社交に飽きた貴族たちが
いつもとは違った趣向を求めるのか
はすっぱな女たちを求めて下町の娼館に流れてくる

ロマの少女のところにもそんな客がやってくる
育ちの良い客 棲む世界の違う人
元の生活であったなら
絶対に会うことのなかったはずの相手

他の子とは違い ロマとして各地を放浪し
独特の人生を生きてきた彼女の話は
貴族の若者にとっては新鮮だったろう

彼が恋に落ちた時 悲劇は起きた

客として あくまで客として接待をしただけ
金払いの良い上客だからサービスをしただけ
あなたはそれ以上でも以下の存在でもない

彼女の冷たく突き放すような言葉に
ショックを受けた若者は
彼女の前で拳銃を取り出して
自らの頭を撃ちぬいた

「僕を崖に立たせて 
 突き落としたのは彼女だ」

と糾弾する言葉を残して

その言葉は彼女の咎となった

永遠に消えない罪となり 呪いにもなった


その前の人生で同様のことがあった
もちろん当人は覚えてないけれど

明の時代 
とある権力者のお妾さんであった人生で
下働きの幼馴染と通じてしまい
見つかって 相手が殺されてしまったこと

意識の上では覚えてはいないけれど
記憶がリンクして繋がってしまう


私が好きになる人はみんな死んでしまう
私は周囲の人を不幸にしてしまう

私と関わる人はみんな私を恨んで死んでいく
みんな死んでしまう 
私が周囲の人の運勢を狂わせている

私は疫病神なのだ 死神なのだ
人々を不幸にする呪われた人間なんだ


自分は恋愛なんてしてはいけないのだと
誰も好きになってはいけないし
誰からも好意を寄せられてもいけないし
二度と恋に落ちてはいけないのだと
無意識下に強く刻み込んで

自分自身に呪いをかけ
自分は罰せられなければいけないのだと
重い罪を背負っている人間なのだと
自らを痛めつけるような人生を選ぶ

現代に生まれた彼女は
何故だか黒い服ばかり好んで着る

喪服を着るように
自分に与えられた罰の証
罪の色だと言わんばかりに


ねぇ 本当は好きだったのでしょう?
だけど言えなかったのでしょう?
本当の気持ちを隠さないといけなかったのでしょう?

ポーカーフェイスで突き放す以外に
他に交わす術を持っていなかったのでしょう?

幼少期から差別される民族としての放浪の暮らしを送り
まして家族を失ってからは 
飲まず食わずの惨めな生活を知っている貴方には
貴族の若者が恵まれた環境を捨てて
屋根裏をドブネズミが走るような路地裏で
生きていけるはずもないと理解していたし

自分に入れあげてお金を費やして
放蕩息子と世間に後ろ指を指される不名誉を
相手に与えたくなかっただけなのでしょう?


"貧しさの中で壊れて消える
 愛の暮らしはイヤだと
 まるでショウウィンドウに
 自分を並べるように
 着飾って誰かを待ってた

 愛が買えるなら
 その涙の理由を教えて
 愛が買えるなら
 ため息の理由を教えて
 いつわらずに… "

 by浜田省吾「丘の上の愛」

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