2020/02/08

失われた言語と滅びた国

復活祭(イースター)の朝 
谷をくだり町へ向かう途中で
騎兵隊の列が私を追い越していった
笛も太鼓も鳴らさぬまま
霧の中 アンジェラスの鐘がリフィー川に鳴り渡る

戦いの旗がダブリンの町に誇り高く翻る
異国の地ではなくアイルランドの空の下で死ぬのだ
ミースから駆けつける強者たち
霧の中 野蛮なイギリス軍がやってくる

戦いの旗がダブリンの町に誇り高く翻る
異国の地ではなくアイルランドの空の下で死ぬのだ
ミースから駆けつける強者たち
霧の中 野蛮なイギリス軍がやってくる

闇夜に響く銃声 
よろめく不実のアルビオン(イギリスを揶揄する表現)
鉛の雨の中 銃剣にきらめく銃火
一振りごとに捧げる祈り「アイルランドに忠義を」
夜明けの霧の中 戦いの旗はなお翻り続けた

イギリスがワイルド・ギース
(アイルランド人傭兵)を戦争へ駆り出し
彼らの亡骸は異国の地で葬られる
ああ
イースター蜂起の英雄らとともに戦ってくれていたら
彼らの名は我らが受け継ぐ 
フェニアンの戦士が眠る この霧の中で

勇敢な者は倒れ 鎮魂の鐘が哀しく鳴り響く
春めく復活祭の季節に命を落とした者たちのために
恐れを知らぬ精鋭たちに世界は括目した
深い霧の中 自由の光が輝くまで 戦いは終わらない

谷間を戻りながら悲嘆に暮れた
勇敢な男たちとの永遠の別れに
夢の中どこに行こうと ひざまずき祈ろう
深い霧の中 隷属を破った栄光ある犠牲のために

アイルランド民謡「Foggy Dew」




上記は英語バージョン
下記はアイルランド語(ゲール)バージョン



今ではアイルランドにおいて
もともとの言語であった
ゲール語を話せる人はほとんどいず
敵国の言葉であった英語が国の言語になっている

そしてかつての敵の言葉で
敵と戦った反乱軍の歌が歌われている

これは何とも言えないことですね


日本と韓国の関係もそうですが
隣国と仲が悪いというか軋轢や確執があるのは
世界中どこにでも見られる状況のよう
領土の侵略や奪い合いすなわち覇権争いや
国益の問題が絡んでいるので
歴史的にみて何もない国同士の方が珍しく
痛ましい事件や悲劇的な出来事が絶えません

インドとパキスタン イギリスとフランス
トルコとルーマニア アメリカとメキシコ
アイルランドとイギリスの関係もそうですね

アイルランドもイギリスもどちらも好きな国なので
両国のことを想うと胸が痛みます

過去生のことで言うならば
アイルランド人であったことも
イギリス人(スコットランド)だったこともあるので
自分の好きな国であり思い入れのある国同士が
このような関係性であったことに
とても複雑な思いを抱いてしまうのです
どちらの側も経験しているので
とはいうものの
イギリスに生まれた回数のほうが多いから
そいう意味では侵略する側の立場に偏りやすいかな

でもね
それを言ったら 私だけでなく誰もかもが
どの国の人間でもあったことがある

私もアメリカ人だったりイギリス人だったり
フランス人だったり中国人だったり
エジプト人だったりインド人だったり
ロシア人だったり中東や中南米や島にいたり
もうあちこちの国に生まれて
今はもう名前も残っていない
歴史に埋もれて地図から消えてしまった
亡国の人間であったこともあったりする

だから敵国の子孫に生まれてしまっていても
そんなことは大したことでない
かつて自分が滅ぼしてしまった国の
後にできた国に生まれていたり
地に染めてしまった土地に生まれていても
それはちっともおかしくないこと

かつての故郷 愛すべき自国
大切な人や身内と暮らし繁栄を誇り
自分の子孫が脈々と続いている国が
今の自分にとって敵国や侵略者である
ということも珍しくはないこと



さて今 新型肺炎が中国を中心に流行っていて
日本でもあれやこれや問題が起きていますが

武漢って昔の楚だったところなんですよね

はい始皇帝に滅ぼされた楚の国です
三国志よりは古い時代かな
映画化された「レッドクリフ」で描かれた
赤壁の戦いで有名なとこも武漢の一部

そして
私は楚の国の人間だったことがあるわけです
そんな明晰な記憶があるわけではないですけども

かつての故郷でもあるわけです

戦で滅ぼされていく
荒廃した状況下での人生でしたので
辛く悲しい事ばかりで
郷愁や思慕の気持ちというのとは違いますけれど
今回のニュースを聞いて
なんか当時の哀しみが蘇ってしまうわけです

今は当時の敵だった秦の国も民もなく
すべてが中華人民共和国で同じ国民です
かつては他国たったウィグル自治区も
チベットも侵略併合されちゃって

その人生でも子孫は残していないものの
どこか別の人生でご縁があった人たちが
あの場所に生まれて生きているのかも知れない

そんなことを想った日には
どの国の出来事であろうと他人事ではないと
思ったりします
だからといって
私が出来ることなんて何もないんですけどね

ただ日の本の国にいて
今日の自分に与えられた仕事をして
自分の人生を一生懸命生きて
今回のことに関しても
ただ祈るばかりです


でね
そんな風に

あなたからして 関係のない遠い国の話だと
縁のない国だと そう思っている国のことでも

遥か遠い昔にその国その場所に生まれて
愛する人たちや大切な人たちと心を通わせて
二度とは帰らない時間を重ねて生きて
かけがえのない日々を送った人生の想い出が
眠っている国なのかも知れません

その国の人間として生きて 
誰かを愛して 大切なものを築いて失くして
泣いたり笑ったり怒ったり喜んだりをして
隣国を侵略して攻撃したり逆に侵略されたり

自分が色んな立場を経験して味わった
無関係ではない場所なのかも知れないのです

今泣いて苦しんでいる人は
今生まれた人そして死んでいく人は
その時代のあなたの子孫だったり
逆に今のあなたの人生でのご先祖様だった人で
あなたの国を批判している人は
あなたがかつて親と呼んだり
愛し合った誰かなのかも知れないのです

この地球上においては
どの人も無関係な他人なんていないのです
血の繋がりだけが私たちの繋がりではないのです

あなたは次の人生で
今日のニュースで報じられても心が動くことのない
スルー出来る無価値とも思える無関心な国に
その生を受けることになるのかも知れない

そして
あなたが今憎んだり嫌ったりしている民族に
生まれることになるのかも知れない

その時に今生まれて恩恵を受けている自国
この日本を憎み偏見を持つことになるのかも知れない

国や民族や歴史に左右されるのは本当に愚かなこと
それで人を判断したり分類したり
敵と認定するのもとても愚かで意味のないこと

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